「……祠稀、お願い」
そっと祠稀の手に触れると、ビクリと祠稀の肩が強張った。
あたしの存在を確認した祠稀の瞳は揺れている。今にも涙が溢れそうなほど、どうすればいいか分からないと嘆いてるようにも見える。
その視線が、あたしには頼ってくれたように思えた。
「……今思ったこと、言って。過去も、ヒカリさんのことも、復讐のことも威光のことも全部1回忘れて、真っ先に思ったこと」
言って。
簡単じゃないかもしれないけれど、それを言えば、変われる。
たったひと言が踏み出す勇気になる。口に出せば、それが覚悟になる。
あたしを見つめていた瞳から、まっすぐと落ちた泪。
祠稀を縛り付ける真っ黒なものなんかより、何倍も綺麗な透明の雫。
「……逢いたい……」
ピアスが光る唇から紡がれた言葉は本当にひと言。でも、充分だった。
「うん、逢いに行こう」
あたしは微笑んでから、祠稀の手を引いて歩き出す。
大きく大きく、1歩、また1歩と。
闇夜に浮かぶ月が、どうか祠稀の心までも照らしてくれますようにと、祈りながら。
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