「……うるせぇんだよ、黙れ、黙れよ……っ」
……あたしが泣いちゃ、ダメだ。
堅く閉ざされた祠稀の心に、遠慮もなしに土足でズカズカと入りこむあたしに、泣く権利なんかない。
「そうやって自分を責めて終わりなのかって。祠稀、あたしに言ったよね」
彗の親戚のことで泣いていたあたしに、なんて言ったか覚えてるでしょう?
過去なんてどうでもいいと。過ぎたことをいつまでも悔やんで、どうにかなるのかって。
過去は変えられない、大事なのは今だと。そんな言葉が出てきたのは、祠稀もそう思ったことがあるからでしょう?
どれだけ一時でも、復讐なんて言葉、忘れられたからでしょう?
復讐なんてしないで。
前を見て歩こうと、もう一度思ってよ。
階段の手すりを殴った手で顔を覆う祠稀に、あたしはグッと涙を堪える。
「ねぇ……祠稀にはいるじゃん。苦しいって、つらいって伝えられる人が。……いるのに、伝えないのも、受け入れないのも祠稀でしょう」
黙ったままの祠稀に、あたしは奥歯を噛み締めた。
怒りにも似た感情が、洪水のように胸に押し寄せたから。



