僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅱ



「うるせぇ。ほんと、黙れ。平凡でなんの苦も不幸も感じたことがねぇ奴に、俺の気持ちが分かるのかよ。俺の不幸がどんくらいのものだったか、お前に分かんのかよ!」


声を張り上げた祠稀を、じっと見上げた。


まだ何か言いたいことはあるのだろうかと、確かめるためだった。


けっきょく祠稀は何も言わずに、血走りそうな瞳であたしを見下ろすだけ。


「……不幸って何?」


祠稀が黙ったのを確認して、あたしは問いかける。


その言葉に祠稀が目を見張ったのは分かっていたけど、だからと言って言葉を飲み込むわけはなかった。


「何が不幸なの? 虐待されてたこと? 居場所がなかったこと? ヒカリさんと出逢って、威光に入って、幸せだったんじゃないの? 救われたんじゃないの?」


どうして知ってるんだとでも言いたげな祠稀に、あたしは傷を抉るような真似をしていた。


「ヒカリさんが亡くなったのは自分のせいだって責めて、お父さんと天野って人を憎み続けて、それが全部不幸だって言うの?」

「うるせぇ!!」


ドンッ!という音と共に、階段の手すりから微かに反響音が響く。


堅い鉄を力任せに殴っても、祠稀は痛くないんだろう。