「偽善者らしい答えだよ。博愛主義、愛他主義。凪が誰でも平等に、広く愛して優しくしてやんのは立派だと思うぜ? ……でも、吐き気がすんだよ」
そう。それで?
だから、何?
そんな言葉しか思い浮かばないあたしは、どれほど自分勝手なんだろう。でも止まらないの。もう止めることができないの。
祠稀。
あたしには、祠稀が強がってるようにしか見えない。
「偽善だって感じるのは、祠稀が自分を不幸だと思ってるからでしょ」
呆れたように視線を落としていた祠稀がピクリと反応し、ゆっくりとあたしを見据える。驚きにも、戸惑いにも、怒りにもとれる表情を浮かべて。
「……何? 今……、はは……勘弁しろよ」
額を抑えて俯く祠稀の目の前まで、あたしはやっと詰め寄った。
これが、あたしの望む距離。誰よりも近く、誰よりも深く、あたしは祠稀のそばにいたい。
例え祠稀が、望まなくても。
さらりと流れるように、ひとつまみほどの前髪が祠稀の顔にかかる。
そのままあたしを睨んだ祠稀の瞳に潜んでいたのは、怒りではなかった。
「お前みたいな奴にだけは、言われたくねぇよ……」
振り絞るような、唸るような声色すら、
あたしには今にも泣き出しそうな声に聞こえるんだ。



