「……なんでここにって、顔してるね」
薄暗い、外からの灯りだけに照らされるビルに入った瞬間、階段から降りて来たのは祠稀だった。
あまりにも簡単に会えてしまって驚いたけれど、予想していたからなのか、あたしは先に口を開くことができた。
目を見張っていた祠稀は、あたしの手に持たれた花束を見つけ、何もかも分かったとでも言うように、ふっと鼻で笑う。
「……勘がいいのか? それとも運がいいのか、凪は」
「どっちでもないんじゃない」
答えたあたしは横に在ったテーブルに花束を置いた。
祠稀は「ふーん」と言いながら残りの階段を全て降り、紫蘭の花束を見つめるあたしに問いかける。
「じゃあ何? まさか調べてきたとか言わねぇだろうな? 仮にこの場所を知ってるやつがいたとしても、そう簡単に教えるはずがねぇ」
「……あたしが、祠稀を止める運命だからじゃない」
自分の気持ちが思っていたよりも落ち付いているのは、そのせいだ。
笑ってもいいよ。
運命だとか、絆だとか。
祠稀が信じなくても、あたしは信じるから。
「あたしが祠稀を止める運命。ヒカリさんの、代わりに」
紫蘭から祠稀を見て言うと、一瞬、本当に一瞬、暗がりの中で、祠稀の瞳が哀しみを帯びた。でもすぐぐに変わる表情なんて、見なくても分かる。
笑うんでしょう、祠稀。



