僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅱ



……ビル。


元は会社か、マンションだったのかな。


そう思った時、まるで不機嫌になったように強い風が吹き、髪を巻き上げる。


突風に目を閉じ、頭上から僅かに響いたカラン……という何かが倒れた音に目を開ける。


「う、わっ!?」


ビルを見上げた瞬間に何かが落ちてきて、とっさに身を捩った。


バサッと地面に叩きつかれたものに、思わず「は?」と素っ頓狂な声が出た。


――花束。

にしては珍しい花だった。


ふつう切り花ではなく鉢植えで売られてる確率のほうが高いだろうに。


あたしはまた煤けたビルを見上げた。


目を凝らすと見える、花束が置いてあったであろう屋上。


不自然なほどにぽっかりと1枚抜けた、フェンスの柵。


「……5階、建て……」


あたしは一瞬悩んでから、ビルの入り口を目指した。



紫蘭の花束を、拾い上げて。