僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅱ



「俺、多分祠稀より強いから」

「「……」」


俺に知らせてね、と。当たり前のように言う彗は力尽くでマンションに連れて帰る気なんだろう。


祠稀を見つけたところで、素直に戻ってくれないと分かっているから。


「……まあ、僕じゃ抵抗されたら勝てないから、いいけど」

「みぞおち一発でキメなさいよ、彗」


あたしは彗と祠稀の強さを知ってるからこそ、念を押した。


喧嘩して目立って、先生に見つかったら元も子もない。殴り合いになったとしても、街の外であってほしい。


「俺は1回メンバーと合流して情報の把握させなきゃ」

「うん、俺は有須たちと合流するから、凪は俺と……」

「ひとりで平気。できるだけ手分けして探したほうがいいでしょ」


ひとりで行かせるわけないでしょ。そう彗が言う前に、あたしは駆け出した。


「じゃあそういうことで!」

「ちょ、な……!」


あたしは上手く人混みに紛れ、彗とチカの前から逃げ出した。


見渡す限り、人、人、人。


時間が経つたびに人数が増えていってる気がしたのは、気のせいじゃない。


この街は夜になるたび輝きを増すんだ。空が黒くなるたび人が増え、灯りも増える。


その分だけ、嘘も悪も増えているんだろうけど。


――祠稀。


ここが、祠稀の生きてきた場所なんだね。