僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅱ



虐待から逃れた時にヒカリさんに拾われて、威光に入って、救われて。でも長くは続かなかった。


お父さんに、天野という男にヒカリさんは貶められて、祠稀を拳銃から守った時に、誤って屋上から転落死したんだと……。そう、祠稀は笑って話してくれたと、チカが教えてくれた。


「……祠稀は」


ぽつりと呟くチカに視線を送ると、何かを言いたそうで、でもとても言い辛そうにしている。


きっとそれは出来事ではなく、気持ちだろうと思えた。


祠稀がチカに話したのは過去の出来事だけで、その心の内までは聞かせなかった。それ故に、チカは感じたんだと思う。


あたしが、チカから聞いて感じたものと、同じものを。


「……祠稀はただ、自分のせいでヒカリさんが死んだって言ってたけど……だから、威光の意思を継いだって言ってたけど……知ってるんだ、僕。……祠稀が、隠してるもの……」


お兄さんが祠稀を退学に追い込もうとしてることを知って動揺してるのは、あたしだけじゃない。チカも、小刻みに体を震わせて、泣き出しそうな声で言葉を紡ぐ。


祠稀の秘密を、分かっているから。


「……僕はそれでもいいんだっ。祠稀のそばに……いられるなら」



――復讐。

その言葉がいちばん合ってる気がした。祠稀の秘密に、名前を付けるなら。