◆Side:凪
「……待って凪。1回落ち着こう」
「そんな時間ないってば!!」
夜7時のネオン街の端っこで、あたしの声が響く。
「祠稀が退学になってもいいの!?」
目の前にいる彗が困ったように眉を下げながらも、走り出そうとするあたしの腕を離すことはない。
「……嫌だから、ちゃんと計画を立てようって言ってるんだよ」
いくら探しても見つからない祠稀。その上、有須から彗に入った電話の内容に、あたしはとても焦っていた。
「もう、なんなの……!」
地団駄を踏みたくなるほどもどかしい気持ちの代わりに出た言葉。そんなあたしの腕を彗は放して、俯くチカに視線を送った。
「……チカ?」
彗が呼んでも、チカは反応しない。
祠稀を探しながら、チカが話してくれた内容。それは、祠稀が話してくれた虐待という真実の裏に隠された、真実だった。
秋に入ってから祠稀の素行が悪くなったのは、ヒカリさんという存在を強く思い出す季節だからだったのかもしれない。



