僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅱ



だけど俺は、忘れない。威光に救われたことを。


だから、ヒカリの命を奪ったのが俺ならば、ヒカリの意思を継ごうと思った。それがどれほど、“ヒカリの威光”に対する侮辱になるとしても。


積もるだけの復讐心を吐き出さなければ、気が狂ってしまいそうで。


自分のために威光を利用するのは確かで、でもそれと同じくらい、俺には威光以外何もなかった。


威光が消えるということは、俺を認めてくれた場所が消えるのと同じことで。俺はそれに耐えられるほど、強くはなかったんだ。



そして、ヒカリの仮面を被った。


『何泣いてんだ、お前』


“俺の威光”の行く先が、光在るものではないと分かっていながら、あたかも俺自身が光であるかのように。


『……うわ、すげー傷。親父にでも、殴られたか?』


ヒカリには到底及ばぬ偽りの遊侠も、宥恕も。夜の街に集まる子供には通じた。


そんなものは嘘で、救いたいわけでも、癒したいわけでもないのに。


『壱佳? ふぅん……嫌いなんだろ、自分の名前。だったら、捨てれば?』


ただ自らの復讐心を隠す、自らを守る、弱き盾でしかなかった。



『チカ。ようこそ、闇夜の威光へ』



――中学3年生。


木々が再び紅葉を始めるより早く、


俺は自らの手で、威光を再建した。