だけど俺は、忘れない。威光に救われたことを。
だから、ヒカリの命を奪ったのが俺ならば、ヒカリの意思を継ごうと思った。それがどれほど、“ヒカリの威光”に対する侮辱になるとしても。
積もるだけの復讐心を吐き出さなければ、気が狂ってしまいそうで。
自分のために威光を利用するのは確かで、でもそれと同じくらい、俺には威光以外何もなかった。
威光が消えるということは、俺を認めてくれた場所が消えるのと同じことで。俺はそれに耐えられるほど、強くはなかったんだ。
そして、ヒカリの仮面を被った。
『何泣いてんだ、お前』
“俺の威光”の行く先が、光在るものではないと分かっていながら、あたかも俺自身が光であるかのように。
『……うわ、すげー傷。親父にでも、殴られたか?』
ヒカリには到底及ばぬ偽りの遊侠も、宥恕も。夜の街に集まる子供には通じた。
そんなものは嘘で、救いたいわけでも、癒したいわけでもないのに。
『壱佳? ふぅん……嫌いなんだろ、自分の名前。だったら、捨てれば?』
ただ自らの復讐心を隠す、自らを守る、弱き盾でしかなかった。
『チカ。ようこそ、闇夜の威光へ』
――中学3年生。
木々が再び紅葉を始めるより早く、
俺は自らの手で、威光を再建した。



