……ああ、ムカつく。ばかばかしい。早く消したい。
てか、消えろ。
でもその前に、苦しめ。
俺を家に連れ戻したことを、後悔しろ。
「いてやるよ? お前らが、嫌になるまで、ずっと。嬉しいだろ? 俺が、家にいて。助かるだろ? 俺が、いることで」
俺という玩具がいて。俺がいるお陰で殴られずに済んで。俺ができそこないのお陰で安全な位置にいられて。
嬉しいだろ? 助かるだろ?
幸せなんだろう、お前らは。
「いいよ、好きにしろよ。俺も、好きに生きる」
表情の強張る親父に、母さんに枢稀。
夜10時を告げる気食の悪いメロディーが響き渡り、俺はくすりと笑った。
「悲喜劇の始まりだ」
ヒカリが死んで2ヵ月。
季節は真冬に差しかかり、積もるは雪と、燃え盛るような復讐心。
親父も母さんも枢稀も、天野もそのグルもあの街も。俺がいらないと思うものは全部、全部、消し去ってやる。
――この日から俺は変わった。
残りわずかの2年生は捨て、あの街に入り浸った。
ヒカリが消えた威光は跡形もなく崩れ去り、リュウもユナも、他のメンバーも、誰ひとり見かけることはなくなった。
ただひとつ残された威光の本拠地には名残だけが残り、威光は都市伝説みたいなものになっていくんだろう。
それを裏付けるかのように、威光が消えた街は瞬く間に汚れていき、再び虚構の街になった。



