「……き、祠稀っ!!」
肩を掴まれて、両目から何か冷たいものが、ボロッと落ちた。
やっとヒカリを捉えたのに、俺の視界はまたぼやけて。
それが涙のせいであると理解した時は、ヒカリの死も理解してしまった。
「あ……あ……ヒカッ、ヒカリ!」
「祠稀っ、お前動くな! 怪我して……」
「ヒカリ!!」
嘘だ、嘘だ。
こんなのは夢だ。
死ぬわけない、ヒカリが死ぬなんてありえない。なんで、こんな……嘘だ、夢だ。
「ヒッ、ヒカリ……なんで、目ぇ開けろよ……」
動かない、僅かにも。
俺に見せた笑顔は幻だったように、面影は欠片もない。
「……う、あ……」
「祠稀、落ち着け……し……」
「あああああああああ!!!!」
はらり、はらり、椛が舞う。
餞のように、ただゆっくりと。
風は吹いてないのに静かに落ちる紅は、残酷に思えた。
―――秋の宵闇。
唯一の光は、輝くのを已めた。



