「きみ、大丈夫!?」
いとも簡単に体を起き上がらせられ、俺は目の前の警官を見つめた。頭には、入って来なかったけれど。
「……ヒカリは?」
「え……?」
「ああいいから、早く車乗せちゃって。ちょっと薬物検査したほうがいいかもね」
「あ、はい! ほら、キミ! 立って!」
無理やり腕を引っ張られて、足元から吹いた風に立ち止まった。ドクンッと、血が体中を廻る。
見下ろした先に、ヒカリが“いた”。
「ああ見ないほうがいいよっ!」
警官に手首を引っ張られても、俺は動けなかった。
……は、……は?
何……ここ、屋上。
なんで、ヒカリが。
ビルの下に。
「ほらっ! 危ないから、行こう」
強く引っ張られ、俺はよろりと足を進めた。
……下に、なんで……。
……落ち、……落ちた?
「ヒカ……リ」
「え!? ちょっ……!」
―――死ぬとか、死なないとか。そんな言葉すら頭にはなかった。
ただ一心不乱に、ヒカリを求めた。1秒でも早く、ヒカリのそばに行きたくて。
ぽっかりと、奇妙に空いた暗闇に身を投げ出すことすら、厭わずに。
なんの迷いもなく飛び降りた。
地面に落ちたというよりも、木々にぶつかった気がするけれど。体中痛いし、視界も回ってたけど。目の前に、横たわるヒカリがいるのは分かった。



