「親父に金でも積まれたのか!!」
クソ、クソ、クソッ!!
なんで、なんで、なんでっ!!
来てた。来てた、コイツ。ウチに。
親父の友達だとかで、家に何度か来てたことを知ってる。親父が裏カジノをしてるなんて、知らなかった。コイツが警察だなんて、知らなかった。
でも知ってる。天野の顔だけは、見覚えがある。
「答えろよ!! 金もらったんだろ!?」
怒りなのか恐怖なのか哀しみなのか。頭に血が上ってるのか、体温が下がってるのか。
もう、分からない。
体中が震えて、涙が溢れて。
ヒカリがとても悲しそうに俺を見ていることも。天野が黙って口の端を上げていることも。俺には、絶望しか与えない。
「――さて、祠稀くんも見つかったことだ。もう話はお終いでいいかな?」
天野は俺の質問にはいっさい答えずに、ヒカリに向き直った。当の本人も、俺に言葉をかけるでもなく、天野を見つめ返す。
「……終わってませんよ。祠稀を帰すわけにはいかない。あなたも、悪事がバレるのは困るでしょう」
「……困りましたねぇ。私に交換条件を出すなんて、ねぇ?」
天野がそう笑いながら俺に振り向いた時だった。後ろの階段から、バタバタッと煩い足音が聞こえたのは。
慌てて振り向いた刹那、複数の手が目の先にあって、俺の体はふたりの警官に押さえられた。
「っ離せよ!! なんだよ!!」
「祠稀っ!」
――ジャキン、という聞き慣れない音に、暴れていた俺は止まって、警官も止まる。
恐る恐る天野に視線を移すと、その手に持たれた黒光りするものに、目を見開いた。



