僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅱ



「は!? おいコラ! 祠稀っ!!」


気付く暇もなく、俺は車から飛び出しビルへと向かった。リュウの声はすぐに遠のいて、俺は裏口どころか、真正面からビルに入る。


「あ、ちょっと君!」


ひとりいた警官を押し退け、俺は階段を1段、2段と飛ばして上った。頭の中では、この出来事の全てが、全貌が、把握できていた。


『今の事態はお前のせいじゃねぇんだから』


リュウに、先に謝るべきだったかもしれない。違う、と。ごめん、と。言うべきだった。


得体の知れない不安を覚えたのは、親父の執着心でも、天野の危険性でもない。逆に、親父と天野のせいであると言ってもいい。


「はっ……はぁ……クソッ!!」


乱れる息と、重くなる足すら気にならないほどに、俺は屋上へと一気に駆け上がった。


―――バンッ!


「ヒカリ!!」


秋風が頬を撫でて、屋上から見える空の広さにゾッとする。


広さが目につくこの場所で、たったふたりの男が向かい合ってる。それが、異常に感じたから。


「はっ……はぁ……お前……っ」


乱れた髪の隙間から見える、スーツを着た男。天野は睨み上げる俺を見て、厭らしく口の端を上げた。


「ああ……いるじゃないですか。“祠稀くん”」


オールバックの髪のせいで、よく見える顔。そこにある二つの目は糸のように細く、俺はこの目をよく知っていた。