「祠稀って、鳥みたい」
「……なんだそりゃ」
彗は俺から視線を外し、想像するように目を伏せる。
「……どこにでも行けそうだから。雨の日でも嵐の日でも、飛んでいけそう」
どこまでも自由に。
そう呟いて彗は瞼を閉じた。
返す言葉が浮かばない俺は、行き場所を失った感情を掻き消すのに必死だった。
鳥みたい? 俺が?
「もっとかっこいいのに例えろよ」
ふっと鼻で笑えたけれど、本当は手に持つ煙草を投げ捨てたくなった。
──どこが。
俺のどこが、自由に飛んでいけそうなんだ。
そんなのは、希望だ。
俺が羽を持ってるとするなら、柔らかい、しなやかな羽じゃない。
傷だらけで、血だらけで。それでも飛ぼうとする哀れな羽だ。
自分の弱さを隠すように、真っ黒な羽をして。決して落ちまいと、折れることすら許されない羽。
それのどこが、自由な鳥なんだ。
「……祠稀」
ハッとすると、今にも落ちそうな灰が目に入った。それから、決心したような彗の強い眼差し。
その見えない決心ですら、今の俺は笑い飛ばせる気がした。



