「祠稀、大丈夫。ちゃんと歩いて。真っすぐ、前だけ見て。強く、進んで。祠稀には、そういう生き方をしてほしいんだ」
聞こえてるのに、意識が定かではなくて。言いたいことは山ほどあるはずなのに、言葉がうまく出なくて。
どうしよう、どうすればいいんだよ。
そう思ってる間に、裏口のドアにリュウが立ってるのが見えた。
「祠稀……大好きだよ。俺も、リュウもユナも、みんな、君のことが」
口を開きかけた瞬間、トンッと肩を押された。同時に、リュウが俺を受け止めた感触。
「っ!? なんっ……ヒカリ!!」
伸ばした手は、届かなかった。
鉄製のドアが、何者も拒むように俺の目の前に聳え立ち、煤けたビルはヒカリただひとりしか受け入れない。
「なんでっ、なんでヒカリしか残らねぇんだよ!!」
残ると思っていたリュウに無理やり引っ張られ、俺は必死に手を伸ばし続けた。閉ざされたドアに。見えもしない、ヒカリに。
届くと、触れられると。
ただ空気を切るだけのその行為は、虚しさと絶望しか感じさせないにも関わらず。
絶えることなく、ビルが見えなくまるまで。
俺は手を、伸ばし続けた。



