「……ユナと祠稀じゃ話が違う」
言ってる意味が分からない。
近付くサイレンの音に、不安と焦りと苛立ちが同時に襲って、気が狂いそうだった。
「ユナがたまに家に帰るのは、リハビリなんだ。それができるのは、俺がユナの両親に1度のチャンスを与えたからだよ」
「……チャンス?」
「俺はユナの両親にもう虐待するなと忠告したんだ。了承もしてもらった。だからユナは、自分の足で家に帰る訓練をしてるの。ユナ自身が、家族の再生を望んでるから」
――まさかと、思った。
俺以外は全員ビルを出たことを確認しながら話すヒカリから、目を逸らすことができない。
「これは、俺が売った喧嘩だ」
見開いた目に映るヒカリは真剣そのもので。その偉大にしか感じられない姿は、すぐにぼやける。
「これが答えなら、俺は、祠稀を家に帰すことはできない」
……親父に、忠告したのか?
いつ?
いつだよ……なぁ、ヒカリ。
「俺は祠稀を守るって、決めたから」
もういい。
もう、いいよ。
あんな腐った奴から、俺を守ろうとしてくれただけで。それだけ充分だよ。
この場所があるだけで。その事実だけで、もう。



