限界なんて、とうに越していた。
親父を初めて殴り返した日、階段の柵の隙間から見えたふたりの顔には痣があって。
俺が夏休み中帰らなかったから。俺のせいで、暴力の矛先がふたりに向かったのに。
だから、親父を殴ったのに。
ふたりは俺を止めて、もう、わけが分からなかった。
親父に殴られるためだけに帰ることも。
その理由である母さんと枢稀を、なんで俺が守らねばならないのかと。
誰も知らないのに。俺が勝手にそうしてるだけなのに。
それでも、それでも。昔からひとりでそうしてきたから。
今さら捨てることなんて、できなくて。
でも、でも、もう……
「助けて、ヒカリ……」
ひとりでなんて、生きていけない。
「助けるさ。だから、大丈夫だよ」
でももう、遅い。何もかも。
分かるだろ。
聞こえるだろ、ヒカリ。
パトカーのサイレンが、すぐそこまで来てる。



