「俺が帰ればいい話だろ! 簡単なことだ! 離せよヒカリ!!」
帰ればいいんだ。あの家に。
親父に殴られていい。
蹴られていい。
「根性き焼きされようが、ナイフで切り刻まれようが、気絶するまで首絞められようが、水ん中に頭突っ込まれようが、いいんだよ!! 我慢すればいいだけの話だ!」
そう叫ぶと、突然ヒカリに抱き締められた。
と、思ったら背中を覆う服を捲られ、ヒカリの乱れていた呼吸が呑まれたのが分かる。
「……家に、帰ってたの?」
……帰ってた。
ヒカリやリュウの古着をもらってたけど、本当は帰ってた。荷物も何も持たずに、1週間に一度、手ぶらで帰っていた。
ただ、溜まりに溜まった親父のストレスを、一身に受けるためだけに。
「……祠稀……っ」
再び服が背中を覆ったと思ったら、ヒカリの腕に強く引き寄せられた。
もう何がなんだか分からないほど、俺の背中は根性焼きや切り傷でいっぱいだろう。
「我慢と覚悟は違うんだよ……!」
だって。
分からないんだ。
簡単に覚悟を決められるほど、大人にはなれない。
覚悟というものを決めるほど、俺には守りたいものがあるのかも。それは、本当に心の底から守りたいものかさえ。
俺には、どんな問題よりも難しすぎる。
だから、いつか我慢が覚悟に変わるなら。それでいいと思った。
それで、少しでも守りたいものが、守れるなら。



