「警察が、ヒカリを探してるって」
ザワリと、得体の知れないものが背中を這う感覚に、俺の足はピタリと止まった。
外観はボロいけれど、中は普通のマンションとなんら変わりはない威光の本拠地。5階以外はほぼ使ってないと言っていいほど、静寂なビル。
それなのに、3階に上がってから聞こえた微かな話声に、俺は足を止めてしまった。
コンビニから帰ってきて、ビルに入るまではいつも通りだったはずなのに。奥の部屋に灯りが点いてるのに気付いて、近付いてしまったのが、失敗だった。
……警察が、なんでヒカリを……。
ドアの奥から聞こえるのは、リュウの声だけ。きっとヒカリがいるんだろうけど、俺はじっとして、動けずにいた。
「今日の仕事相手に、言われた。警察が威光を探してるぞって。そんなわけあるか、警察は味方のようなもんだって言ったんだよ。それなのに……」
「……威光の仕事に文句はないけど、俺のしてることが問題なんだ?」
「……未成年誘拐ってことらしい。っでも! 今まで何も言われなかったのにおかしいだろ!」
「落ち着きなよリュウ。俺らは誰に逆恨みされても、おかしくないでしょ」
「この街で威光に逆らおうとする奴はいねぇだろーが!」
ヒカリの冷静な声とは反対に、リュウは声を張り上げる。俺は、体中が震えていた。怒りじゃない。
どこまでもおぞましい、恐怖。



