「ただいまー」
真っ暗な玄関でショートブーツを脱ぎ捨て、廊下を進む。
誰も起きてないのに、どうしてか言ってしまう自分に苦笑しながら、リビングのドアを開けた。
……風呂入っか。
冷蔵庫からココアを取り出した時、ガチャ…とドアの開く音が俺を迎える。
「……おかえり」
「彗? 何、起きてたのかよ」
驚いて振り返った先にいたのは、凪の部屋から出てきた彗だった。
凪の部屋の明かりを消してからドアを閉めた彗に、首を捻る。
「凪は? 今の今まで喋ってたのか?」
「……寝かしつけてたんだよ」
寝かしつけてた?
子守歌でも歌ってたわけ?
ダイニングテーブルに腰掛ける彗を見ながら、ココアをマグカップにそそぐ。
「凪、マジで具合でもワリィの?」
今日はちょっと、様子が変だったし。
彗は凪の部屋を見つめたまま、俺を見ることなく口を開いた。



