「……っ殺したい、消えてほしい、あんな奴、死ねばいい…っ」
憎しみだった。
俺が、威光の仕事をするたび感じた感情は。
ヒカリはただ純粋に、汚い大人に怒り、俺やユナのような子供を救って癒したいはずなのに。俺は、ヒカリに憧れて、ヒカリのようになりたいだけなのに。
俺の心の奥底は、汚い大人たちに対する憎しみでいっぱいだった。俺は、俺みたいな奴を救いたいわけでも、癒してあげたいわけでもないんだ。
親父に見える大人たちに、復讐していただけ。
憎くて、憎くて、消えてほしくて。
できることならこの手で殺してしまいたいと思うほどに、憎んだ。
「……力が欲しい。誰にも何にも言われないほど強い、力が」
きっと俺は、自分で思ってるよりも、もっと弱い。
この憎しみが消えるなんて思えない。だから、力が欲しい。強くなりたい。
「もう充分、強いと思うけどなぁ」
ポンポンとあやすように背中を叩かれ、俺はヒカリの服をいつの間にか握っていたことに気付いて、慌てて離す。と、ヒカリが微かに笑う声が聞こえた。
「祠稀は死にたいって思ったこと、ないでしょう」
「……あるわけねぇじゃん」
1歩後退して、手の甲で口元を押さえながら鼻を啜ると、ヒカリは雨に濡れた髪を耳にかけ、柔らかく微笑む。
「生きようって思うのも、ひとつの強さだよ」
よく意味が分からず返答をせずにいると、ヒカリは小雨を受けながら屋上を歩き出す。



