「なんだ。怒ってるんじゃなくて、悲しいのか」
ポツ、ポツ、ポツポツと、小さい円を作ってコンクリートが色を変えていく。
空気が湿り気を帯びて、俺はそれに呼応するように、ゆっくりと顔を上げた。
「悲しいんだね、祠稀」
瞳いっぱいに映った金色の目は、細くなってもなお、俺を捉えていた。
静かに流れた泪は、すぐに雨と混じってコンクリートに落ちる。
俺はぐっと眉根を寄せ、歯を食い縛ったのに。ヒカリは1歩近付いて、俺の背中を抱き寄せた。
「言ったでしょ。俺に、強がりは無駄だよって。……泣きたいなら、泣けばいいんだよ」
ヒカリの香水が香る距離で、頭上から聞こえる声に耳を傾けて、俺は力なく首を振った。
「いやだ」
「……どうして」
いやだ、泣くなんて。格好悪い。
悲しいとか寂しいとか、つらいとか。
そんな感情は俺に必要ないんだ。
「俺は、強くなりたいんだよ……!」
ひとりでも生きていけるくらいに。
家族なんてもの、必要ないくらいに。



