「ガキ扱いすんな」
振り向くと、ヒカリが肩を竦めながら俺に近づいてくる。
「俺より10歳年下なのに? それはできない相談だなぁ……っと!」
振るった拳はあっさりヒカリの手のひらに止められて、俺はそのままだらりと頭を下げた。
止められた右手は、ヒカリの手の中で。きっと、ついたままの親父の血でも見てるんだろう。
「初めてじゃない? お父さんのこと、殴り返したの」
「……気絶してるのにも気付かないで、殴りまくった」
「そう。それなのに、どうして機嫌が悪いの?」
するりと右手が自由になって、俺はコンクリートを見たまま笑った。
「やりすぎだって。もう、やめてって。意味分かんねぇ。今まで俺が散々殴られたって……黙って見てただけのくせに。……俺、あのクソ親父に負けてんの? ……笑える」
俺は殴られてよくて、親父を殴るのはダメだなんて、おかしいだろ。
俺が殴られようが、蹴られようが、根性焼きされようが、黙って何も言えずにいたくせに。
親父に逆らえない、弱い人間のくせに。
俺を止める権利なんて、ねぇのに。
ばかばかしい。くだんねぇ。
俺はいったい、なんのために――…。



