「やめとけってユナ。ほっときゃ機嫌直んだろ」
「こら祠稀~! ユナが心配してくれてるよーっ」
ふたりとも言ってることが真逆で、ユナはどうすればいいのか分からなくなったらしい。隣の気配が、そわそわしているのを感じる。
「あっち行け」
仕方なく、俺はユナのほうを向いて言っただけなのに。
ヒカリが「あーっ女の子には優しいんだぁ~」とかなんとか言ってくるから、俺は振り向いてヒカリを思い切り睨みつけた。
「ほらほらぁ! 綺麗なままで、面白いでしょ」
「あー……だな。プッ!」
「~~っだぁもう! マジうるせぇ!」
俺は俊敏に立ち上がり、荒々しくリビングを出ていく。そのまま屋上へ続く階段を駆け上がって、錆び付いたドアの音を響かせた。
蒸し暑いとまではいかないけれど、まだ夏の陽気を含んだ空気を体いっぱいに浴びて、フェンスのほうまで歩く。
乗せられるがまま、近くにあった物を投げればいつも通りになったのに、そんな気分じゃなかった。
機嫌が悪いのを否定するつもりもない。
……でも、そうじゃない。
ただ俺が――…
「子供だなぁ、祠稀は」
ヒカリに構ってほしかった、だけなんだ。



