「お前、家にたまにしか帰ってこないで……夜に、何してんだ」
その言葉に、俺は一瞬息をするのを忘れた。
夜に、何してる? なんで、そんなこと……。
「帰ってくるだろ、祠稀。この家にだよ」
「……は? いきなり何言ってんの?」
鼻で笑ってみたけど、枢稀は未だ気絶する親父を見やってから、俺を真面目な表情で見てくる。
心臓の音が、なんでかうるさい。
背筋が、まるで根性焼きをされた時みたいに、ヒヤリとする。
「帰ってこねぇよ……こんな家、もう二度と帰ってくるか」
振り絞るように、拳に力を込めて紡いだ言葉は、微かに震えていた。
それでも枢稀の表情は真面目そのもので。発せられた言葉に、俺は目眩を起こしそうだった。
「逃げ場なんて、ないよ。あの人から逃げられると思うな」
「……っうるせぇな! 逃げてなんかねぇよ! テメェは黙ってご機嫌取りでもしてろっ!!」
シューズラックの上にあった花瓶を叩き落し、ガラスの割れる音を背に、俺は家を飛び出した。



