「なあ、ソイツが死んだら、誰か困んの?」
俺の問いに、枢稀も母さんも目を見開くだけで。いつまでも返ってこない答えに俺は階段を下りて、玄関に向かう。
別に答えが欲しかったわけじゃない。
単なる気まぐれな質問だった。
「し、祠稀……」
靴を履いていると、先刻とは打って変わって弱々しい声がかけられる。
振り向くと、数メートル先に母さんが立っていた。胸の前で両手を重ねて、誰がどう見たって怯えている。
「何?」
「い、今まで……どこにいたの?」
おずおずと喋る母さんは、自分でもよく似てると思う。顔だけは。
「別に。どこでもいいじゃん」
今さら母親面されても、煩わしいだけだ。
玄関の取っ手に手をかけると、また別の声に名前を呼ばれる。
「なんっだよ……」
うんざりして見向けば、枢稀が近くまで歩み寄ってきていた。俺は伸びてきた髪を耳にかけて、身長の高い枢稀と視線を合わせる。
「人待たせてんだよ。うぜぇ、早く言え」
イライラしながら促すと、枢稀はじっと俺を見て口を開く。



