僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅱ



「何を……親に向かって何をするんだ!」


振り下ろされた手を軽く避け、代わりに顔面を思い切り殴ってやると、親父は鼻血を出した。


はは、と。思わず笑いがこぼれた。


「何をって、え? 親は子供を殴っていいけど、逆はダメなの? 何それ、頭おかしいんじゃねぇの? 大丈夫デスカ?」


鼻を拭って手についた血を見てから、親父の顔は怒りで真っ赤になった。


それを面白いと、再び拳を握った俺も、充分頭がおかしいに決まってる。


でも止まらない、今日は。今日だけは。


何も考えたくなかった。



「もうやめて祠稀!!」


親父の顔が血まみれになっているのに気付いたのは、右手が枢稀に抑えられて、母さんの声を久しぶりに聞いた時だった。


俺に胸倉を掴まれてる親父は、いつ気を失ったんだろう。


だらんとする親父から手を離すと、呆気なく床に倒れた。


「お前……やりすぎだよ!」


俺の横から枢稀が出てきて、親父を階段の下まで運ぶ。枢稀と母さんに声をかけられる親父を見てから、自分の右手に視線を落とすと、赤く染まっていた。


……やりすぎ?

もう、やめて?


「――くっ、……はははははは! ……は、はぁ……なんだそれ」


俺は転がっていた荷物を肩にかけて立ち上がる。枢稀と母さんが俺を見上げるから、見下ろした。



ふたりではなく、この世で1番消えてほしい存在を。