俺は階段の小さな折り返しの場所に落ちて、一直線の階段だったらちょっとまずかったなと、降りてくる親父を見ながら思った。
起き上がろうとしたけれど、親父に馬乗りになられた瞬間、何もかも面倒くさくなる。
まるで張り詰めていた糸が切れたよう。
切れた糸は代わりに、親父のいいように扱われるマリオネットに繋がるんだ。
ただじっとするだけで、心も痛みもない。
壊れても壊れても、親父が飽きるまで幾度でも繰り返される。
……ああ、くだんねぇ。
俺は1発殴られたら、目を瞑る。醜い親父を見たくないから。
頭の中で早く終われと繰り返し、親父が飽きるのを待つだけなのに。いつも通りそうすればよかったのに。
切れた糸はマリオネットではなく、俺自身の腕に繋がってしまった。
――ゴッ!!
目を瞑ろうとした瞬間、階段の柵の隙間から見えた枢稀と母さん。
ただ突っ立って、親父に馬乗りになられてる俺を見ていたふたりに、形容しがたい感情が湧いた。
「父さん!」
気付けば親父は俺の横に倒れていて、階段の下まで枢稀が駆け寄ってくる。
俺は上半身を起こし、よろりと起き上がる親父を眺めた。
汗で額に張り付いた前髪から覗く瞳は怒りに溢れ、俺をこれでもかとばかりに睨んでくる。
階段から落ちればよかったのにと、心底思った。



