「……ヒカリ、がっかりするかな」
5階建のビルにはエレベーターがなく、俺とユナは最上階まで階段で上がる。
2階に上がった時、ユナは泣きそうな声で呟いて、俺は鼻で笑った。
「しねぇだろ。する理由もねぇじゃん」
「……家にも入れなかった。家の前で、気持ち悪くなっちゃって……気付いたら、切っちゃってて」
「家の前まで行けただけで、進歩だろ」
そう返すとユナは黙って、言葉の代わりに俺の手をギュッと握り返してきた。
階段を上るふたりの足音だけが響く。
……体も心も限界で、ユナは自分に傷を付ければ、売り物にならないと刃物を突き付けたけれど、それは逆効果だった。
コアな奴らが、喜んで金を出したらしい。
もう逃げたい、そう思ってた時に、ヒカリが店に来て救ってくれたと話したユナは、幸せそうだった。
きっと、他にも何人も何人もいるんだ。ユナや、俺みたいな奴らは。
この数カ月で、たくさん見て来た。
そのたび、できる限りのことをした。



