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「……祠稀」
蒸し暑い日が続く、夏の夜。家から帰ってきた俺は、屋上にいたヒカリのもとへ向かった。
そんな俺の姿を見て、ヒカリは寂しそうに微笑む。それを、俺は同情だとは思わなくなっていた。
「荷物を取りに行くたびに怪我されたんじゃ、堪ったもんじゃないね」
フェンスを背にして座るヒカリの隣に腰かけると、ふふっと笑われる。
「夏休み中、ここにいていいんだろ」
「うん、いたいだけどうぞ~」
そう言われるとは分かっていたけど、ほっとしてしまう。
俺は錆びついたフェンスに寄りかかり、ヒカリが煙草を吸うのを眺めていた。
バカみたいにくだらないことを話す時もあれば、こんな風に何も話さない時もある。
ヒカリとの沈黙は嫌いじゃない。
きっとそれは、俺にとってヒカリの隣は心地いいものだから。
「ねぇ、祠稀」
ヒカリは煙草を吸い終わると、大抵話し出す。俺は特に返事をせずに、言葉の続きを待った。



