……リストカット……だよな?
その名は知ってたけど、生で初めて見たから疑ってしまった。
ヒカリは足に絡まるその子の頭を撫でてから、再び話し始める。
「俺らが大人になっても、また新しい子供がやってくる。この街には、絶え間なく。それを狙う奴らも増え続ける。俺たちはそれを、見過ごせなかったんだ」
「……」
「この子……ユナもそうだよ。親に、性的虐待されて。この街で売春させられて……まあ色々あってね。俺が買うふりして、連れてきたの」
ユナと呼ばれた子は、ギュッとヒカリの脚に抱きついて、顔を埋めた。
ヒカリはそれを見てから、俺に視線を移す。
「祠稀は、ここに何を求めてきたの? 真夜中に輝くこの街に、少しでも惹かれたからでしょう? ……でもこの街は、嘘ばかりだよ」
俺は何も、返せなかった。
家よりマシだと思ったのは確かだけど。
それは、何かを求めたということで。
何かに、惹かれたということになるんだろうか。



