「俺は何も知らねぇよ!」
「おいおい、勘弁してくれよ」
「俺たちはともかく、リュウさん目の前にしてシラ切り通せるかっての」
周りにいた奴らが笑うと、倉木は顔を真っ青にする。それを見たリュウはしゃがみ込んで、倉木の胸ぐらを掴んだ。
「忠告したよな? また同じことをしたら、ただじゃ済まねぇって。嘘だと思ったか? 噂だと、思ったか」
「……っ、金か!? 金だな!? いくらでも出す! だから……っ」
ゴッ!と、鈍い音がしたかと思うと、倉木が咳き込み、鼻から血を流していた。
「ふざけんなよ……お前のせいで、何人の子が人生棒に振ったと思ってんだよ、あぁ!?」
「ひっ、やめ……っ」
抵抗する倉木に遠慮もせずに殴りまくるリュウ。その様子を、周りの奴らは黙って見ていた。
笑顔なんかひとつもない。ただあるのは、ひしひしと感じる怒りだけ。
……なんだよ、コレ。何人の子が人生棒に振ったって……なんだよ。意味分かんねぇ。
「リュウ」
倉木の顔が血に塗れた時、隣に立つヒカリが囁くように呼び、でも、力強くリュウの名前を口にした。
リュウの赤く染まる手はぴたりと止まり、倉木のすすり泣く声だけが響いた。
「……お前が今雇ってる奴らの名簿、出せ。連絡先も、薬の出処も、全部だ」
……薬?って、ドラッグのことか?
リュウの言葉に倉木はよろよろと立ちあがって、携帯とデスクに置いてあったパソコンを差し出した。



