「ヒカリッ!」
突然、屋上のドアが大きな音を立て、開け放たれる。
「居場所、突き止めたって!」
……誰の?
ドアから出て来たひとりの若い男を見つめながら、不思議に思う。そのままヒカリに視線を移すと、ドクンと脈が波打った。
「そう……じゃあ、行こうか」
センター分けの前髪を風に靡かせて、ヒカリは確かに微笑んでいたのに。一瞬で変わった雰囲気は、怒りを纏っていた。
まるで、歩き出したヒカリの背中を追えと言っているように、激しく鳴る鼓動。
ジリッと、1歩踏み出すか悩んで、遠ざかるヒカリを見つめる。
この1歩を踏み出さなければ、俺は一生、何も変わらない気がした。
何かが変わる。
家にいるより100倍マシな何かが、見つかる。そう思ったら、俺はヒカリの後ろ姿を追いかけていた。
周りに、大勢の人間を従わせた、ヒカリの後ろ姿を。



