「違うよ。自分の殻に、閉じこもる子たち」
「……」
「少年は~、まさに典型的だねっ」
ふふっとおかしそうに笑うヒカリに、俺は腹を立てるわけでも、毒気を抜かれるわけでもなかった。
じっと見つめる俺に微笑むヒカリの目は、金色で。嘘くさい街の明かりよりも、輝いている気がした。
「……つぅか、少年少年って、うるせぇ」
「えー。だって名前知らないもん」
きょとんとして、でも、わざとらしく言うヒカリ。
きっと俺が自分から名乗らなきゃ、ずっと少年と呼んでくるんだろう。
俺が自ら殻を破らなきゃいけないんだということは、悔しいようで、そうでもない。
「祠稀」
「……シキ? へぇ、綺麗な名前だね」
「俺は、嫌い」
嫌いだ、こんな名前。親父の欲に塗れた、吐き気のする名前。
嫌いだって言ってんのに、ヒカリは「シキかぁ……シキ、シキ」と何回も呼ぶ。
何回も、何回も、とても嬉しそうに。
――俺は、誰にも何にも興味なんてなくて。でもヒカリは、俺が初めて興味を持った人間だった。
関わりたい。
そう、思ってしまったんだ。



