「俺は、強いんだ」
そう、思うのに。どうしてか振り絞るような声しか出なかった。
「……そう。でも、強さは自分で量れるものじゃないと思うよ。ついでに言うと、俺に強がりは無駄だからね、少年」
……うるせぇ。なんだ、お前。
「中途半端にやられたね。この根性焼き、ぐちゃぐちゃ。……痛かったでしょ」
虐待されてるんだねと言われた時は、哀れみを含んだように聞こえたのに。今度は、分からなかった。
分からないからこそ、返す言葉が見付からなくて。俺はまた、首を前に倒した。
「まっすぐ強く押しつけられたら、綺麗に丸くなるんだよ。周りの皮膚が盛り上がって、真ん中は少しへこんでるの」
……知るかよ、どうでもいい。見えねぇんだから。
「ビビってたんだね。煙草、持ってた人は。ダッサ!」
「……」
「ちょっと痛いだろうけど、我慢してね~」
痛みが走った。消毒液を含んだ脱脂綿が、きっと血の浮かんだ火傷の痕に押し当てられて。
俺は歯を食いしばって、俯いていた。
痛みを我慢したんじゃない。なんでか出そうになった涙を堪えていた。
ヒカリの本心からの言葉なのか、わざと言った言葉なのか。分からない言葉に、胸が熱くなった。
枢稀は、ビビってたと思う。ダセェとも思う。でもヒカリの言葉は、俺に向けた言葉に聞こえた。
よく耐えたと、頑張ったなと、言われた気がしたんだ。
そんな都合良く感じる俺はどうかと思うけど、そう感じた時、どうしようもなく嬉しかった。
泣きそうになるほど、嬉しかったんだ。



