僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅱ



「同情だと感じるのは、少年が自分をかわいそうだと思ってるからだよ」

「……は? 俺が、かわいそう? どこが? どこも、かわいそうじゃねぇよ」


嘲笑するように言うと、ヒカリは手に持っていた脱脂綿に視線を落とした。


なんで、アンタに分かったような口をきかれなきゃいけねぇんだよ。偉そうなこと言うんじゃねぇ。


黙ったヒカリを睨みながら、俺は勝ち誇ったような気になっていた。だけどヒカリはまた俺を見て、口を開く。


「同情なんかしないよ。虐待されてる子、俺は山ほど知ってるからね」

「……」



恥ずかしいと、思った。


自分を、かわいそうだなんて思ったことはないのに。


ヒカリの言葉は、俺だけが特別じゃないと言っているようで、顔が熱くなった。


俺は、自分だけが特別だと思っていたから。


良い意味じゃない。悪い意味で、他の人間と、はっきり区別されているのだと。俺だけが、虐待されているのだと。


それは、自分をかわいそうだと、悲観的になっているから、そう思うんだと。ヒカリの言葉で思い知らされた気がしたんだ。


でも、それを認める気はなかった。


そんなのは、自分は弱いと言ってるようなもんだから。