「同情だと感じるのは、少年が自分をかわいそうだと思ってるからだよ」
「……は? 俺が、かわいそう? どこが? どこも、かわいそうじゃねぇよ」
嘲笑するように言うと、ヒカリは手に持っていた脱脂綿に視線を落とした。
なんで、アンタに分かったような口をきかれなきゃいけねぇんだよ。偉そうなこと言うんじゃねぇ。
黙ったヒカリを睨みながら、俺は勝ち誇ったような気になっていた。だけどヒカリはまた俺を見て、口を開く。
「同情なんかしないよ。虐待されてる子、俺は山ほど知ってるからね」
「……」
恥ずかしいと、思った。
自分を、かわいそうだなんて思ったことはないのに。
ヒカリの言葉は、俺だけが特別じゃないと言っているようで、顔が熱くなった。
俺は、自分だけが特別だと思っていたから。
良い意味じゃない。悪い意味で、他の人間と、はっきり区別されているのだと。俺だけが、虐待されているのだと。
それは、自分をかわいそうだと、悲観的になっているから、そう思うんだと。ヒカリの言葉で思い知らされた気がしたんだ。
でも、それを認める気はなかった。
そんなのは、自分は弱いと言ってるようなもんだから。



