「……少年、虐待されてるんだね」
やっぱり後ろに立っていたヒカリの、哀れみを含んだような言葉に、カッと頭に血が上る。
「あ、ありがとう。そこ置いといて」
視界にちらっと入った救急箱に爆発的な怒りが溢れ、すぐに消え去る。
後ろでヒカリが救急箱をあさる音を聞きながら、目の前の奴らの視線を全身で感じながら、俺はだらりと首を前に倒した。
「……ふ、くだんね」
鼻で笑って、ぼそっと呟けば、救急箱をあさる音が止んだ。
「……何がくだらないの?」
ゆっくり顔を上げ、俺を見てる奴らを冷ややかな目で眺める。
聞こえない声が、俺には聞こえる気がした。
「うぜぇ。うるせぇ」
こっち見んな。俺のことも、痣だらけなこの体も。
何も思うな。痣だらけの体をしてる、俺を見て。
「同情なんて、いらねぇんだよ」
顔だけ振り向いて、ヒカリを睨みつける。だけどヒカリは動揺するでもなく、真っすぐ俺を見返してきた。



