僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅱ



「……少年、虐待されてるんだね」


やっぱり後ろに立っていたヒカリの、哀れみを含んだような言葉に、カッと頭に血が上る。


「あ、ありがとう。そこ置いといて」


視界にちらっと入った救急箱に爆発的な怒りが溢れ、すぐに消え去る。


後ろでヒカリが救急箱をあさる音を聞きながら、目の前の奴らの視線を全身で感じながら、俺はだらりと首を前に倒した。


「……ふ、くだんね」


鼻で笑って、ぼそっと呟けば、救急箱をあさる音が止んだ。


「……何がくだらないの?」


ゆっくり顔を上げ、俺を見てる奴らを冷ややかな目で眺める。


聞こえない声が、俺には聞こえる気がした。


「うぜぇ。うるせぇ」


こっち見んな。俺のことも、痣だらけなこの体も。


何も思うな。痣だらけの体をしてる、俺を見て。


「同情なんて、いらねぇんだよ」


顔だけ振り向いて、ヒカリを睨みつける。だけどヒカリは動揺するでもなく、真っすぐ俺を見返してきた。