「少年、水は嫌い?」
「……は?」
会話は終わったのか、いきなりヒカリが俺のほうを見て、キャップが開けられていないペットボトルを指差す。
「……別に」
そう返してキャップを開けると、左肩に痛みが走った。腕を動かすたびに服が火傷を擦るから、堪ったもんじゃない。
……うぜぇ。
心の中で悪態をついて水を喉に流し込むと、火傷のせいで体中に広がっていた熱が、少し治まった気がした。
邪魔な灰皿をペットボトルの底で押し、そのままテーブルに置くと、視線を感じる。ヒカリが俺の顔をじっと見つめていた。
何? そう言う前に、ヒカリは俺から視線を逸らし、「救急箱持ってきて」と、誰かに言う。
再び俺と視線を交えたヒカリは、いきなり俺の左手を掴んだ。かと思うと、袖を捲られる。
「……違うか」
「……は? な、んっ!? ちょ、何すんむぐっ!」
理解する暇も抵抗する暇も与えられず、いきなり上半身の制服を、ワイシャツごと脱がされた。
露わになった肌にヒンヤリと感じた空気の覚えと、目の前にいたはずのヒカリがいなくなったことに、背筋が凍る。
ほんの数分前まで笑っていた奴らが、全員俺の体を見ていた。それから、背中に感じる、突き刺すような視線。



