「少年~。そんな隅々まで見ても、楽しいもんなんてここにはないよー」
「確かに!」
ゲラゲラと笑う人たちを見ると、いかつい男が多かったけど、派手な女も何人かいた。
こんな薄暗い、酒や煙草に溢れる部屋と、それに見合う奴の集まりを見たら、危険だと思うのがふつうだろうか。
でも俺には、そう感じなかった。
怖くない。そう思うのは、俺には怖いものが何ひとつないとか、そんなことじゃなくて。
ここにいる全員が、嘘くさい笑顔をしていなかったから。本心から笑っていると、感じたから。
……何が楽しいのか。なんで笑えるのか。知りたいと思った。
ぼんやりしていると、目の前に水の入ってるペットボトルが差し出される。見上げると、ヒカリが微笑んでいた。
「ほら、座りなよ」
ペットボトルを受け取ると右肩を押され、強制的にソファーに座らされた。
ヒカリはそのまま俺の隣に座って、「今日はどうだった?」と、窓際に座っている奴らに話しかける。
そうすると、離れた場所にいる奴らまでヒカリたちの会話に参加していた。
何を話しているのかは分からなかったけど、なんとなく、ヒカリがリーダー的存在なんだと思った。



