―――…
「適当に座って」
ヒカリは髪を束ねながら言って、俺は目の前の光景に少し驚いた。
「ヒカリィ、まーた拾ってきたのかよ!」
「何、新しい子?」
「どんだけ増やすんだかっ!」
若い男女が、部屋のあちこちで笑っている。ヒカリの姿を見つけた数人は声をかけてきて、ヒカリはやっぱり笑顔で答えた。
「えー、いいじゃん別に。仲良くしてね!」
……なんだ、ここ。
『今日、泊まるとこがないなら、俺の家においでよ』
沢村のことがあったから警戒したけど、行く場所もあてもなかったのは確かだったから、ヒカリについて行った。
路地裏から少し歩いて着いた場所は、煤けた廃墟ビル。
まさか、こんな何年も使われないまま放置されたようなビルが、ヒカリの家?
そう思いながら階段を上がって、ある一室のドアを開けた先には、十数人の人影があった。
無造作に置かれたテーブルやソファーは、ビルと同じで決して綺麗とは言えず、テーブルや床には、缶ビールや一升瓶、灰皿や様々な種類の煙草が置かれている。
……ホント、なんだよここ。リビング?にしては変だし、きたねぇ。
壁でもぶち抜いたんだろうか。明るいとまではいかないが、天井につけられた間接照明が、広い部屋を照らしている。
隅の照明がチカチカと明滅を繰り返すのを横目で見ていると、ヒカリに声をかけられた。



