「……は?」
「だからぁ、お前みたいに親に見離されてぇ、見捨てられて? まあどっちでもいいけど。この街に逃げてくる奴は、山ほど……」
「俺が捨てんだよ!!」
張り上げた声に沢村は目を見開き、やがてクッと喉を鳴らした。
「ああ、はいはい。そうだな、間違って悪かったよ。お前が捨てるんだよなぁ~」
ふざけんな。
誰が、誰が……っ!
必要ねぇと思ってんのは、いらねぇと思ってんのは、俺だ!
俺が捨てられるんじゃねぇ。俺が、捨ててやんだよ。
あんな、腐った家族を。
「とりあえず、名前教えてくんねー? 売りに出す時必要だからぁ。あとー」
ひとりでべらべらと話し出す沢村の言葉は耳には入っても、頭には入らなかった。
……なんだ。ここも腐ってんのか。
俺は、ここに何を求めてたんだ。
家より、マシ? どこが。沢村みたいなやつに頼るなんて、御免だ。
俺は、ひとりで生きる力が欲しいんだよ。



