「……お前、今暇?」
「別に、暇だけど……アンタ誰?」
俺の質問に答えず、舐め回すように俺を眺める男。
「暇なら、ちょっと俺に付き合え」
「は? ……なんだよ」
制服で来たからには補導されるかもと思っていたけど、明らかにコイツは補導員ぽくない。
ホストか何かだろうか。そう思って、俺は黙って見知らぬ奴について行った。
「なあ、金欲しいか?」
連れてこられたのは、薄暗い路地裏で。俺は、沢村と名乗った男を見つめる。
狐のような細い目に、ワックスであちこちに向く茶色い毛先。背はそんなに高くないけれど、醸し出す雰囲気が怪しげだ。
「金欲しい年頃だろ?」
「……別に、あれば助かるけど」
財布、持ってきてねぇし。
俺の答えに満足したのか、沢村は携帯を取り出して、何か見せてきた。
薄暗さに慣れていた瞳に向けられた携帯の光に目を細めながら、俺は画面に映る、ケバいおばさんを見る。



