僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅱ



「何? ははっ、俺に根性焼きすんの、怖かったわけ? 今さら?」

「……お前、頭おかしいよ」


そう言った枢稀を見る俺は、口の端だけ上げて、笑った。


「おかしいって、何? 何が? 俺が変だって言いたいわけ? じゃあお前らは正しいの? お前は変じゃないの? 親父は正しいの?」

「……っ触るな! 気食悪いんだよお前! なんで……なんで笑ってるんだよ!」

「はは、何? 何ビビってんだよ」


お前らのほうが、よっぽど気食悪いじゃん。なんで俺が不気味がられなきゃいけねぇの?


……つまんねぇな。全部、全部。


俺を殴る親父も、その下僕みたいな枢稀も、怯えるだけの母さんも。それを黙って受け入れる俺も。


「全部消えればいいのに」


ぽつりと呟くとリビングのドアが開いた音がする。変わった空気に顔を上げると、親父が入ってきたところだった。


「……何をしているんだ」


電話でもしてたのか、携帯を持っている親父に枢稀は「いえ、なんでもないですよ」と返す。


何が、なんでもないだよ。


俺はゆらりと立ち上がり、熱を持った肩の火傷に眉を寄せた。



コロシタイ。
コロスカチモナイ。

ジャア、ナグレバイイ。


ダメダ。

ソンナコトシタラ――……。



「お前らなんか、消えろ」


胸に渦巻く黒い感情を押し込めて、俺は家を飛び出した。



頬に流れる生温かいものに、気付かぬまま。