「うぜぇんだよ。早くやれ。それともビビってんの? お兄ちゃん」
――ゴッ!
……イテェな。優しく扱えクソ野郎。
カーペットの繊維が肌を擽り、俺は静まるリビングに目を閉じた。
「叫ぶなよ」
お前が叫びたいんだろ。クソ兄貴。
「――っ!」
ジュッと皮膚が焼ける音と、想像もつかなかった刺すような痛みに、俺は歯を食い縛る。
こめかみのあたりで拳を握って、出そうになる悲痛の叫びを、呑み込んだ。
1秒、2秒、3秒。
もしかしたら、もっとかもしれない。
俺の肩には、根性焼きと言う名ばかりの、一生消えないであろう虐待の証がほんの数秒で刻み込まれた。
「これに懲りたら、もう二度と喧嘩なんてするなよ。枢稀、お前は勉強しろ」
「……はい」
俺から離れて、風呂とか言いながら母さんに怒鳴る親父の背中を見て思う。
アイツにも同じこと、してやろうか。
そんな考えはすぐにバカバカしくなって体を起こすと、火の消えた煙草を持つ枢稀の体が、微妙に震えていることに気付いた。
「……はは、何。アンタ、震えてんの?」
吸い殻を灰皿に落とした枢稀は目を見開いて、笑う俺を見つめる。その表情は、明らかに恐怖に染まっていた。



