「お前には我慢が足りないんだ、祠稀」
「我慢と根性ですよ、父さん」
手触りがいいんだか悪いんだか。俺には分からないブラウンのカーペットに顔を押し付けられたまま、捲られたワイシャツの襟元から、ヒヤリとした空気が背中を這うのを感じた。
それから不自然なほど一か所に感じた、熱い、何か。
「……そうか、根性がないのか」
ゾクリとした。
感じた熱気が、露出した肩に向けられている煙草だと分かったから。
「枢稀、お前がやれ」
「あなた……っ!」
俺は母さんの声に目を見開く。押さえ付けられている頭を少し動かすと、母さんが青ざめて、体中を震わせながら俺のほうを見ていた。
「なんだ」
親父の煩わしそうな声に涙ぐむ母さんは口を噤んで、俺がじっと見ていることに気付いたのか、慌てて顔を逸らす。
そんな母さんを見て、何を勘違いしてるのか親父は鼻で笑ってみせた。
「うぜぇ」
ボソッと呟き、親父と枢稀を見上げる。案の定ふたりは目を見張り、床に横たわる俺を見ていた。
グッと、俺の頭を押さえる親父の手に力が入ったのに笑って、枢稀に話しかける。



