僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅱ



勉強が嫌いなわけじゃなかった。成績が、悪かったわけでもなかった。


教師には褒められるのに、親父から与えられるのは罵声と暴力だけで。その意味が、俺には分からなかった。


ただ感じたのは、俺は、できそこないなんだと。


そんなもの、親父だけが思ってるだけだと理解していたけれど。幼い頃から言われた言葉は、そう簡単に消えるものではなかった。


街中や学校の行事で親子というものを見かけるたび、自分ほど無意味で、愛されない存在があるだろうかと、笑うしかなかった。


親父の期待は憎悪に変わり、俺の希望も憎悪に変わった。


膿のように溜まっていくそれは全てを麻痺させ、心の奥底を深く深く、黒く染め上げていく。


グッと下唇を噛んで、湧き上がる感情を押さえこんだ。


ほんの少しの間、我慢すればいい。大人になるまで。


大人になったら、こんな家出てってやる。


何もかも捨てて、全てリセットして、人生をやり直す。


口の中に広がる鉄の味、胸に渦巻く黒い感情。



月明りだけが差し込む部屋で、俺は行き場のない拳を、体の横で握り締めていた。