軋む体をなんとか立ち上がらせて、制服に付いた埃を掃う。ふと、リビングのドアの横で、震えながら俺を見てる母さんが目に入った。
「し、祠稀……」
恐る恐る俺に近づいて、顔の傷に触れてこようとした母さんの手を避ける。
「触んな。平気だから」
何が平気なのか自分でもよく分からないけれど、こんなことは日常茶飯事で、なんともないと思ってるのは確かだったから、そう言った。
そのまま母さんの顔も見ずに横を通り過ぎ、俺もリビングを出て行く。
――中学2年生。
もう、いつからされてるかすら覚えてないほど、俺はできそこないだと、親父と兄貴から一方的な暴力を受けている。
でも、成長するにつれて、自分に力が付いてきたことが分かった俺は、もう抵抗ができるんじゃないかと感じていた。
きっともう、言葉だけの反抗ではなく、殴り返すこともできる。
階段を上がって、来客に金持ちさをアピールしたいんであろう壁に飾られてる絵画や、いたるところに施された派手な装飾に吐き気を覚えながら、部屋に入って鍵を閉めた。



