問題アリ(オカルトファンタジー)





「俺、スタンレーってーの、よろしく」



「あ、僕はチェス。こっちがリオン」



遠くから老婆が呼ぶ声がする。スタンレー、スタンレー、と帰ってくるはずの家族を心配するような声で。


呼ばれたスタンレーは思い出したように声のするほうへと顔を向けて、踵を返した。


その間にも彼を呼ぶ声は何処からか響き、面倒くさくなったのか、スタンレーは大きな声でその声に答えてから、またチェスたちに向き直った。



「これ、ありがとな!また遊びに来るよ、チェス」



「うん、いつでも来てね」



「あとおじさん、その仏頂面どうにかしたほうがいいぜ」



「お前の心配など不要だと言っているだろう」



行ったのは何十年も前だが。


ブッ、と噴出したチェスへ冷たい視線を送りながら、リオンはフン、と背を向けた。


怒ったリオンを見てニヤニヤと笑いながらチェスへと目配せしたスタンレーは振れない手の代わりに笑顔を向けて、自分の家へと帰っていった。


皺くちゃの顔をした老婆が家の前でスタンレーの帰りを待ちわび、その姿が見えた途端に両手を広げて、その身体を抱きとめる。


その顔に一層皺を深く刻んで。


白く長い髪を持った妹の少女はおばあちゃんが作ってくれたケーキを食べる時間が遅れた、と小言を述べている。


その二人に美味しそうな柿を見せながら家に入っていくスタンレー。



「ねぇリオン、リオンはこの世界が嫌い?」



「だからこそ、死神をしている」



「僕は、好きだな」



楽しそうな声が町に響く。


その声を聞きながらチェスは相変わらずの仏頂面をしたリオンを見上げて、笑った。


いつかその仏頂面にフィンと同じ安心感を湛えた笑顔が訪れることを、少しだけ望み、それでもまだ暫くはこのままでいいかと、思いながら。


というか、リオンに笑顔など想像がつかなすぎて、まだまだ先になりそうだと安堵する。
笑顔とは無縁の冷たい顔は、不思議そうな顔でチェスを見下ろす。


空は光の粉に包まれたいつかの朝日とはまた違った美しさで、人間を逸した二人も平等に、包んでいた。







END